僕の探偵物語 vol.2 あなたには友がいる(編集部修正版)


中学生のころアメリカのビジネスマンは「これは私の仕事ではありません」っと仕事を断るって話を聞いて、いまいちピンとこなかった。

たぶん、農耕民族の日本人は家族で農業を営んでいて畑仕事はみんなで協力し合いながら手伝うっていう感覚が仕事に近いからで、収穫という共通の目標にもらってみんなで頑張るんだからどの作業も自分に関係があって個人単位で考えないからなんだろうな。

僕も多分に漏れず日本人でそういった日本的美徳の話を話を見たり聞いたりしていたからしっかり魂にしみこんでいて、ピンとこなかったんだと思う。フォー!アメリカって超クールね。





日本の企業も家族経営的なつながりを求められていて「従業員は家族です」って考えを持っている経営者も沢山いる。僕もそこまでではないけれど近い感覚値を持っている派に属する。

とはいえ現在2023年は働き方改革が推し進められていて、副業も認められ、「フリーランスで稼ぐ」みたいな香ばしい本がヒット作になったりしている。時代の流れも大きく変わったもんだ。

こんな未来が来るとはあまり想像していなかったけれど、僕の周りでも確実に働き方改革は推進されている。何にもない日の事務所は19:00には空っぽ。ビバ!ホワイト!

そしてそんな未来を想像することもできなかった「従業員は家族」的な感覚が色濃く残る20年以上前の依頼のお話し。



「クビする従業員が■■しないか。。。」

依頼者は小さな町工場を経営する60代男性のX、依頼者はそこで働く従業員60代男性のY。東京にはまだまだ小さな町工場ってたくさん残っている。従業員1~10人程度の町工場は全体の7割以上らしい。

Xは不景気の中どうしても人員削減する必要があるらしく、これまで家族同然に付き合ってきたYをどうしても解雇しないといけない状況に追い込まれた。

親の代から引き継いだ小さな町工場を何とか続けるために、泣く泣くYを解雇するのだ。






いやいや、探偵に払うお金があるんだったら1か月でも雇用続けてあげろよ。
とも思いつつXは心の底からYのことを心配している様子だった。

Yへの尾行は解雇を告げた直後から3日間というものだった。4月の東京はとても過ごしやすい季節で張り込みも楽だ。初日の昼にYの顔を確認することができた、今から2時間後に解雇宣告されることを全く知らない男は美味そうにタバコを吸い、缶コーヒーを飲んでいた。

近所の小学校の授業の終わるチャイムがなったころYが町工場から出てくる。さぞかしがっくりした姿なのかと思いきやYは予想外に元気な様子だったのが、強がっていたのだろう、駅に向かう途中、自販機の横で体育座りでボーっとしていた。60代男の放心、項垂れる頭、沈む夕日、タバコと缶コーヒー、凄まじい負のオーラと哀愁だ。




30分ほど放心したYはそのまま最寄り駅に向かい電車を待つ。もしかしたら■■するかもしれないということも頭にあったので電車に■■■■■ようにいつもより大分近くの距離を取った。

Yはそのまま何事もなく帰宅、30分ぐらい部屋の明かりはついていたが直ぐに消えた、人の心を癒すのはどんな時代でも睡眠だ。スリプル!ゆっくり寝てくれ。

そこからまる一日Yは自宅から出てこなかった、元々活動的なタイプで外に出ることも多いようだが出てこない。次に自宅を出てきたのは翌々日の夕方だった。

自宅を出てYは人に会った。

50代男性Z、2人の雰囲気を見るに友人同士、二人はチェーン系の大衆居酒屋に入っていった。何でも話せる友達、人の心を癒すのはいつだって心優しい友の存在だ。きっと「クビになっちゃってさー」「まじか!?やばいじゃん!」とか話しているはず。

2人は居酒屋を出て、キャバクラへ。男の心を癒すのはいつだって美しい女性だ。きっと「こいつ、クビになっちゃってさー」「マジー?かわいそ~」とか話しているはず。

そしてキャバクラを出た2人は■■■へ。傷ついた男の心を癒すのはいつだって、人のぬくもりだ。きっとZに奢ってもらうんだろう。

60代男性のYは今回の解雇に屈することなく間違いなく立ち直るだろう、なぜなら彼には素晴らしい友がいるから。



最終日午前中、Yのハローワークへ行く姿を撮影した。 

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